2016/3/17 読売日本交響楽団 第556回定期演奏会
出演
指揮: ローター・ツァグロゼク
会場
サントリーホール 大ホール
聴いた席
P席真ん中辺り
感想
行けなくなった知人からチケットを頂いて参戦。
一曲目はジョージ・ベンジャミン。この人の作り出す音響は確かに美しいのだけどどこか引っ掛かりがないんだよなあ……と思っていると開演に間に合わなかった。貰い物でこれは申し訳立たない。
気を取り直してコダーイのハーリ・ヤーノシュ。P席はやっぱり面白い。この曲みたいにパーカッションの編成が大きいと消されてしまう音も多いのだけれど。ツァグロゼク氏は非常に硬質な音楽作りで、この曲のスコアからラヴェルのように幻想的な響きを引き出していた。管楽器・打楽器セクションは大健闘であった。
後半の「英雄」はそれに比べるとアンサンブルが乱れが多くミスも多かった……けれどもこの荒れ方は悪くなかったと思う。ツァグロゼク氏の指揮は微に入り細にわたってニュアンスやリズムの変化を要求するもので、初めての客演で要求に応えきるのは難しそうだった。それに対して守りに入らなかったゆえの乱れだという風に聴こえた。完全に実現できなかったにせよ、細かなニュアンス作りの積み重ねの先に、このベートーヴェンの中でも屈指に複雑な交響曲の真の姿が見えたように思う。
2016/3/11 新国立劇場「イェヌーファ」
スタッフ・キャスト
イェヌーファ:ミヒャエラ・カウネ
コステルニチカ:ジェニファー・ラーモア
シュテヴァ・ブリヤ:ジャンルカ・ザンピエーリ
ラツァ・クレメニュ:ヴィル・ハルトマン
ブリヤ家の女主人:ハンナ・シュヴァルツ
指揮:トマーシュ・ハヌシュ
演出:クリストフ・ロイ
合唱指揮:冨平恭平
合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団
聴いた席
B席(三階やや右側)
感想など
初めて観るヤナーチェクのオペラということで結構前から楽しみにしていた……はずだったのだが、この日はあまり万全とは言えないコンディションで臨んだ(前日に3時くらいまで夜更かしした上に午前は4DXで映画を観てきた)のであまりちゃんと集中して観れたとは言えない。
このオペラは音楽的に言えば確かにヤナーチェクの個性はあるものの、やはりもっと後の作品の豊かさには若干見劣りするかなあというのが正直なところ。彼の音楽は器楽曲でも「歌う」よりは「語る」という感じがあり、オペラもやはりそうだった。朴訥とした音の流れゆえに自然に演技に溶け込む歌、言葉が止まった瞬間に広がりを見せて心情を描き出す音楽。チェコ語がわかればもっとテクストと音楽の間の関係を自然に感じ取れたのだろうかと思うと歯がゆい。
2016/2/20 新日本フィルハーモニー交響楽団 #554 定期演奏会
出演
指揮:広上淳一
ヴァイオリン:米元響子*
プログラム
アッテルベリ作曲 交響曲第6番ハ長調『ドル交響曲』 op.31
モーツァルト作曲 ヴァイオリン協奏曲第1番変ロ長調 K.207 *
グリーグ作曲 『ペール・ギュント』第1組曲 op.46、第2組曲op.55
会場
すみだトリフォニー大ホール
聴いた席
A席(二階席中央)
感想など
遅れてしまい、アッテルベリの「ドル交響曲」第二楽章からホールの中で聴いた。この作品は知らない作品だったが、なかなか佳作だった。書かれた時代を考えると古典回帰的な作風と言ってよいのか、構成もオーケストレーションもすっきりしている。第二楽章の深い抒情性も良いし、第三楽章など、わざとらしいくらい陳腐な楽想を使いながら綿密に構成されていて飽きずに聴けた。広上さんの指揮ぶりは、第二楽章で弱音でも盛り上がってきても同じくらい大きく円を描くように振っていたのが印象に残っている。新日フィルはいつもよりもよく鳴っている気がした。雨降ってたのに。
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲はモーツァルトといえどもまだまだ若い時期の作品だなあ。米元さんのヴァイオリンは適度な鋭さがあって良かった。伴奏はもうちょっと弦が軽い方が好み。
メインの「ペール・ギュント」組曲は「いくつか知ってるメロディがある」くらいの曲だったけれども、率直に言って、ひねりもなく同じ楽想が繰り返されてつまらない曲だなあ……と思った。どう演奏されても自分の好みではなさそうだ。
オーボエの客演奏者の高崎さんという方が印象に残ったけれども、普段は群響で吹いている方らしい。群響もそのうち聴いてみたい。
来年のラインナップ
新日フィルの来年のラインナップのチラシがパンフレットに挟まっていた。
この楽団は在京オケの中でも先鋭的なプログラムを組む団体だったけれども、来シーズンは井上道義氏がオール武満プログラムを組んだくらいで、非常にオーソドックスなプログラムが並んでいる。個人的にはこれまでの方が食指を動かされるものが多かった。かなり急激な方向転換に思えるけれども、どういう経緯でこうなったのだろう。新音楽監督の上岡氏の意向が強いのかな。
客演指揮者の顔ぶれもかなり変わったしで、なかなかどう転ぶのか予想がつかない。
2/13 NHK 交響楽団 第1830回 定期公演 Cプログラム
出演
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ヴァイオリン:ジャニーヌ・ヤンセン
会場
NHKホール
感想など
首席指揮者に就任したパーヴォ・ヤルヴィの下でのN響の演奏が非常に充実しているという話は聴いていたのだが、ようやく実演に聴きに行けた。ここのところ金欠気味なので E 席にした。3つプログラムがある中でこの公演を選んだのは、先月の新日フィル定期で初めて聴いたニールセンの第五交響曲が気に入ったため。ジャニーヌ・ヤンセンは好きな奏者だけれども、正直言って3階席で独奏ヴァイオリンがちゃんと聴こえることは期待していなかった。
しかしそんな低い期待(奏者でなくホールに対して)をジャニーヌ・ヤンセンのヴァイオリンは吹き飛ばしてくれた。無伴奏での pp からオーケストラと被さっての音まで、三階席までばっちり飛んできた。そのような技術と楽曲全体の構想の的確さがあって初めてもたらされる高揚感があった。
メインのニールセン五番は掛け値なしに素晴らしい演奏だった。この作品の特に第一楽章では平穏な音楽と不安を煽る音楽が同時に並行していくが、暴力的な打楽器と柔らかい音から軋む音まで大胆に振れる弦楽器セクションの活躍、くっきりと浮かぶ木管のソロが殊にその実現に貢献していた。一楽章終わりの著しい弱音もまた異様な空気を醸し出していて印象深かった。多様な楽想が絡み合いながら肯定的な音楽に向かう(おそらくは相剋の末の善なるものの勝利、とでも言うべきか)二楽章がまた素晴らしかった。コーダの、殊に金管の響きのノーブルだったこと。
晦渋な作品にも拘わらず会場には何度もブラボーの声が上がっていたが、それも納得というものだった。
1/30 山田和樹 マーラー・ツィクルス <第2期 深化>第4回 @Bunkamura オーチャードホール
出演者
演奏:日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:山田和樹
ナレーター:上白石萌歌
ソプラノ:小林沙羅
気になってはいたものの第1期は全然いかなかったこのシリーズ(マーラーの2、3番はそれほど好きではないこともある)、行けなくなった知人からチケットをもらえて行った。席は三階席左の方。
残念ながら遅刻してしまい「系図」は聴けなかった。ロビーのスピーカーで聴いたが良い演奏だったようだ。客席の反応もなかなか良かった。詩の朗読を暖かいオーケストレーションが支えるこの曲は、プログラムに入れれば必ず成功するという作品だろう。
マーラーの四番はろくに聴いていなかった曲だ。歌が入る四楽章よりも第三楽章に大きな重点が置かれていることをこの日初めてちゃんと把握した。その第三楽章に特に熱気がこもっていた演奏であったと思う。山田和樹のアプローチはあまり奇をてらわないものという風に思ったけれども、私が曲を知らないから気づかなかっただけでいろいろ仕掛けていたのかもしれない。
彼のタクトの元での日本フィルについては木管セクションに充実を感じた。弦の音が今一つ飛んでこず、Hr. Tp. はトップの音が抜けすぎていた印象。
もう少しこのシリーズを聴き続けてみたい。
このブログについて
演奏会の鑑賞記録などは元々持っているのと別のブログにしようかと考えた。
最近 Twitter にバラバラーっと書いて終わりにしてしまっているけど、なんだかんだで鑑賞記録はつけた方が良いなあと思っている。クラシックだと、この演奏者の昔の公演どうだったんだろう? と思ってネットで調べた時に出てくる情報というのは結構少なくて、別にプロの批評家が書いたものでなくても貴重で面白かったりする。ただ、それなりにまとまった量が無いとその人のベーシックな捉え方がわからず、それは好ましくない。書きためていくのは重要かなと思っている。
で、元々ブログ持っていたわけだけれども、私にそんなに話題がある訳ではないので、演奏会の鑑賞記録をつけ始めると完全に演奏会ブログになってしまう。それはちょっと意図していない。
このブログの方針としては
- 演奏会に行ったら書く。
- 別に演奏会じゃなくてもよい。
- 長さは別に短くても良い。
- 率直に思ったことを書く。演奏した人に失礼だったとしても書く。
- 書きたくなったら昔の演奏会の話も書く。
という風に考えている。
どうせ Twitter に感想投稿するのなら、それをまとめちゃえば? というスタンス。
ゆるく続けていければなと。